『謙虚なコンサルティング―クライアントにとって「本当の支援」とは何か』エドガー・H・シャイン著

 エドガー・H・シャイン著『謙虚なコンサルティング―クライアントにとって「本当の支援」とは何か』において、タイトルの通りの「謙虚なコンサルティング」という新しい概念が提起されています。

 

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

 

 

営業活動・コンサルティングにおいて、重要な示唆があるものの、訳者のせいか、事例中心の記述のせいか、整然としない文書である為、自分なりの解釈をここにまとめます。

 

※あくまで私が解釈したものとなりますので、本書を読む歳のガイドライン程度としてください。

 

新たなモデルの提起

コンサルタントが取り組む問題は、問題自体が複雑化し、クライアント組織も複雑化している傾向にある。そしてクライアントはかつてない切迫感を感じている。そのため新しいコンサルティング・モデル、すなわち「謙虚なコンサルティング」が必要である。

 

「謙虚なコンサルティング」とは

「謙虚なコンサルティング」という概念は、通常のコンサルティングに新たなプロセスを追加するという点もあるが、主には重点を置くポイントを変える為のものと言える。

「謙虚なコンサルティング」が特徴的なのは、クライアントとの関係性をレベル2という一歩踏み込んだ信頼関係を築くことを重視すること、また、その関係を基盤にしてクライアントが「次に何を実践すべきか」を見つけ実行に移すこと(アダプティブ・ムーヴ)を支援し、さらにそれを繰り返していくことである。

 

レベル2の関係

どのような社会であれグループであれ、人間関係というのはネガティブで敵対的、かつ不当な扱いをするものから、きわめて親密なものまで、さまざまなレベルになる可能性がある。コンサルティングにおいては、知らない人との通常の関係、つまりレベル1の関係では事足りない。

 

より深いレベルで特定の人物と仕事ができるようになることが必要である。本当の支援を行うのに不可欠な信頼、すなわち、約束をしてそれを守ること、共同で取り組む仕事について、関連情報を共有し、互いに嘘をつかないこと。これが謙虚なコンサルティングに必要なレベル2の関係である。

 

関係を深めることによる効果

パーソナライゼーションによってレベル2の関係を築くことはいつも必要だというわけではないが、問題が複雑さを増し、依存し合うようになればなるほど、レベル2の関係を築いてコミュニケーションを図る重要性は高くなる。

レベル2の信頼関係を築くことで、取り組むべき問題に取り組んでいるのかどうかも、今行っている支援が本当に役立つのかどうかも、判断できるようになるのである。

 

レベル2の関係性を築くために必要なこと

レベル2の関係を築くには、初めて言葉を交わす瞬間から、コンサルタントは力になりたいという積極的な気持ちと、好奇心と、クライアントに対する思いやりに基づくコミュニケーションを見せなければならない。

 

もし自己中心的に考え、その関係の自分にとっての意味に耳を傾けるなら、クライアントはそれを感じ取り、依存するか打ち解けないかのどちらかになり、レベル1より深い関係になることはなく、本当の考えを打ち明けることもないだろう。

 

信頼し、率直なやりとりで、共に取り組むためには「問いかけ」が重要である

関係の構築は、言葉や声の調子、相手に対する態度から始まる。それらによって相手が述べる言葉が決まり、その言葉からあなたが述べる言葉などが決まる。そうした相互に影響し合う「ダンス」を行うなかで、あなたと相手は、一緒に取り組めるか、信頼し合えるか、適切な率直さで話ができるかを、暗黙のうちに判断することになる。

この「ダンス」において、あなたは、謙虚な問いかけから強力な提案のあいだで選択を行うことになる。その範囲の選択としてベースとなるのは、さまざまな問いかけをすることだ。

 

関係構築における3つの問いかけ

さまざまな問いかけには、以下3つの問いかけがある。

 

(診断的な問いかけ)

新たなアイデアをクライアントの頭の中に強引に押し込むのではなく、もっともだと思えたらクライアントがさっと取り入れられるように、アイデアを示していく問いかけ。

 

(循環的な問いかけ)

組織の他の人たちがどのように考え、感じ、行動していると思われるかを、クライアントに考えてもらうための問いかけ。

 

(プロセス指向の問いかけ)

「私は期待に答えられているか」といったクライアントとの人間関係プロセスに重点をおいた問いかけ。

これによって、以下3つのいずれかまたは複数の効果が期待でき、クライアントの認識いている問題・希望・プロセスの方向性を変えることができる。

 

  • クライアントの問題に対する分析について集中して考える・語る
  • クライアントがコンサルタントに望むことに集中して考える・語る
  • クライアントがやりとりに集中する

 

「謙虚なコンサルティング」のゴールは、「思考プロセス」を再構築すること

謙虚なコンサルティングが最も役に立つのは、次の方法でクライアントの考えを再構築することにある。

 

  • 問題をもう一度、説明する
  • クライアント自身の役割が何かを再考する
  • コンサルタントがするべきことは何かを再考する

 

このプロセスの再構築を重ねると、クライアントは内部関係者と外部関係者の視点を組み合わせて、今起きていることや、注目すべき点や、それについて何をすべきかを考えることにより、自ら素晴らしい成果を得ることができる。

コンサルタントはクライアントの全てを知りえないため、改善内容に口を出す誘惑に負けてはならず、あくまでクライアントが答えを出すためのプロセス支援を行うべきである。

 

アダプティブ・ムーヴ」

アダプティブ・ムーヴ」とは、問題の解決策ではなく、それが状況を改善したり、次の改善アクションにつながる、インタビューや調査といった行動である。

これを通じて、クライアントの懸念に集中し、クライアントに次の一手をコンサルタントと共に考えるのだと理解してもらい、力を合わせて次の行動を起こすことが効果が高いのである。

 

まとめ

レベル2の信頼関係を築くことで、クライアントと率直な意見を交わせるようになり、クライアントとクライアントの課題を深く理解する。コンサルタント自身が解決を実践することはなく、問いかけを用いて、クライアント自身が問題に対する思考プロセスを再構築するためのアダプティブ・ムーヴ」に導く。これを繰り返すことで、クライアントを通じて問題を正しく把握し、解決策を見つけることができる。