ヨーロッパから見た日本の過剰サービス

ヨーロッパでの顧客とサプライヤーとの関係

いま、東欧を周遊しており、できるだけ他の国の文化や考え方、暮らし方などを学びたいと思いながら過ごしています。

 

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なかなか現地の方々とお話する機会を作るのは難しいのですが、店舗で接客を受ける際がチャンスだと思い、できるだけ相手とキャッチボールできるように心掛けています。
メニューの内容について質問したり、地域の食文化について質問したりすると、とても親切に教えてくれるフレンドリーな方が多いですね。

一方で興味を持つのは、日本では許されない接客行動が全く問題ないものとして行われていることです。

 
例えば、

・バス運転手はジーパンにTシャツ

・お菓子のショップのレジでリンゴを噛る

世界遺産の受付がお昼にピザを食べながら受付する

・店員とお喋りを続けながらレジを打つ

・旦那に電話しながらレジを打つ

などです。

挙げればきりがないのですが..


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上記は極端な例ですが、彼らは"私と顧客は対等である"というスタンスを取っており、顧客が支払うのはサービスの対価ではなく、あくまで商品の対価であると考えているように感じます。接客者は商品と消費者を繋ぐことが役割であり、消費者が気持ちよく購入する行為にはあまり関心がありません。また、消費者側も気持ちよく購入するニーズをあまり持っていないように見えます。あくまでも彼らは商品を購入しているのです。


このような顧客とサービス提供者(サプライヤー)との関係には少し驚きますが、極度に顧客優位な日本と比べると大きなメリットがあると感じます。

それは、接客以外の要素にリソースを投資できることで顧客への提供価値を高められる、ということです。


日本の顧客意識とその弊害

日本では、商品を提供する側も提供される側も、"顧客は接客サービスに対価を支払っている"という意識が強く、過剰サービスが目立ちます。

 

例えば、

・店を出るまで送り出す行為

・不揃いな野菜や果実を販売しない行為

・営業段階での過剰な情報提供

・丁寧で美しいパッキング

・作り笑顔や異常なまでに丁寧な言葉遣い

・休日のゴルフ接待

・深夜まで続く飲み接待

などです。

こちらも挙げればきりがないですね。

 

日本では海外と比較して、消費者側が商品の購入時に、気持ちよく(あるいはストレスなく)購入することを望み、それを権利として主張する傾向にあります。その期待に応えようとしてサプライヤーが接客を頑張ってしまう分、本来サプライヤーが努力すべき顧客への提案や収支バランスの適正化が弱くなる弊害が生じていると考えています。

例えば私が以前携わったいた某スーパーマーケットチェーンでは、研修におけるおよそ8割が接客対応に関するものでした。

本来、小売りというのは消費者と魅力的な商品を繋ぎ薄いマージンを積み重ねる商売であり、重要なのは顧客にとって魅力的な商材を提案し、仕入と売上を絶妙にコントロールして、顧客から適正対価を貰いながら経営を安定化し顧客にも満足してもらうことです。

しかしながら、経営管理(帳簿作成の為の財務管理ではなく、効率的な利益創出の為の管理)や顧客心理に関する研修はほとんどなく、接客と商品知識が重要視されていました。日本の小売業界がどこまでも接客至上主義であることがよくわかります。

実際、この研修で教えられた接客マナーが実践できない場合、クライアントから苦情が出るという事例が多く報告され、接客至上主義は本質的ではないと考えていた私にとっては皮肉な結果でした。

 

企業としては小売りの本質を捉えていても、顧客の満足度を下落し得る強力なレバーは接客にある為、どうしても接客研修に比重を置かざるを得ないというのが実情です。

このような日本の小売業界の特徴は、サプライヤーだけでなく顧客にもマイナスに働く可能性が高いと言えます。

つまり、接客至上主義にならざるを得ない為にサプライヤー側の提案と経営管理の能力が磨かれず、魅力的な商品提案や、サプライヤーの財務体質安定による善良な低価格化の可能性が相対的に低下するということです。


顧客とサプライヤーのあるべき姿とは

小売業界を例に述べてきた接客至上主義は、日本の他のサービス業でもほぼ同様であり、C to Cの業界では少し弱まるものの、同様の傾向は見られます。

日本におけるサプライヤーと顧客の関係は、接客に重きが置かれるが故に、サプライヤーが提案力や資金力を失い、顧客への還元率が低減する、という状況に陥っています。

"接客をより丁寧にする=人件費の追加投入"です。これによってコストは拡大し、サプライヤーの資金力は低減します。更には提案やコスト管理、価格管理について追究するリソースが減り、顧客への提供と経営管理の精度が落ちます。酷いケースでは接客は接待に昇華され、異常な投資や従業員のストレス・離職を引き起こします。

そして、提案力と経営力が低下した業界では接客と価格だけが競争要素になってしまうという負のスパイラルが生じているのではないでしょうか。

本来、サプライヤーが十分に収益を出し、その収益を投資することで、顧客はより良いサービスや商品を、よりリーズナブルに受けられるようになる、というのが顧客とサプライヤー間のあるべき姿であるはずです。

 

前置きが非常に長くなりましたが、ヨーロッパにおける顧客とサプライヤーの関係は、サプライヤーが接客だけに傾倒せず、"顧客への提案"と"経営管理"を大事にできる状況を作り、顧客へのより良いサプライを実現するものだと捉えています。

リンゴを噛りながら接客をしている店員自身がそうした状況を実現しているとは言いません(彼が実現する場合もあるでしょう)。
彼に接客研修をする、彼の接客を覆面調査する、接客に関する顧客アンケートを行う、彼のほかに接客要員を採用するといった"接客向上活動がないこと"が、そうした状況を実現しているのです。

接客は大切ですが、何よりも顧客の為になることは、顧客を満足させる提案を行い、納得のいく価格でそれを提供することです。

接客だけを重視した日本の接客至上主義は、結果的に顧客満足を低いレベルに留めます。顧客側も接客に多くを望むことで自らが得るサービス品質を抑制することに加担しているのです。

こうした状況では提案力と経営力を磨いた海外のサービスに国内サービスが淘汰される可能性すらあります。日本の顧客とサプライヤーは、お互いが何を求める関係なのかを見つめ直すべきです。本質的なサプライの価値をだけに視点を置き、接客の細かな点にはお互いに目をつぶる関係性を築ければ、日本の決め細かな取り組みで商品やサービスの提案力を大きく向上させることができると思います。