不都合な真実のなかで前を見据える

私たちの世界観は現実の社会で見たものと、メディアを通じて見たもので構成されていますが、それらは真実からほど遠いものです。

この事実は、とても実現できないだろうと思っていた夢が実現するという希望を孕みますが、逆もまた然りです。

 

昨日、書評を書いた『隷属なき道』を読んでいてそんなことを考えました。

著者のルトガー・ブレグマンは論証にエビデンスを多用します。そのエビデンスは「観念で捉えるな、数値で捉えよ」と訴えます。世界に対する認識は大きく覆されました。

 

一部を例として以下に掲載します。

 

アメリカの貧困線で暮らす人は、世界人口の最も豊かな一四パーセントに属している。アメリカで中央値の賃金を得る人は、世界で最も豊かな四パーセントのメンバーだ。

  

わずか六二人が、三五億人の総資産より多い富を所有しているのだ。

 

ソマリアの幼児の場合、五歳までに死ぬ確率は二〇パーセントだ。以下比べてみよう。アメリカの前線兵士の死亡率は、南北戦争で六・七パーセント、第二次世界大戦で一・八パーセント、ベトナム戦争では〇・五パーセントだった。それでもわたしたちは、母親が「本物の」難民でなければ、ためらうことなく、幼児をソマリアへ送還する。

 

一九七五年から二〇一五年まで、アメリカ国内で、外国人か移民の攻撃によって死ぬ確率は、三六〇万九七〇九分の一だった。しかもその四一年間のうち三〇年は、そうした攻撃で殺害された人は一人もおらず、九・一一のテロで亡くなった二九八三人を別にすると、その期間に外国生まれのテロリストによって殺されたのはわずか四一人。平均すると一年に一人だ。

 

ほんの少し、ドアを開けるだけでも良い。先進国全てがほんの三パーセント多く移民を受け入れれば、世界の貧者が使えるお金は三〇五〇億ドル多くなると、世界銀行の科学者は予測する。その数字は、開発支援総額の三倍だ。

  

地震東日本大震災)当日、テレビに登場したアメリカの経済専門家、ラリー・サマーズは、皮肉にもこの悲劇が日本経済の引き上げに役立つだろうと述べた。確かに短期的な生産性は落ち込むが、数カ月後には復興への取り組みが需要、雇用、消費を増大させるだろう、と。ラリー・サマーズは正しかった。日本経済は、二〇一一年にわずかに下落した後、翌年には二パーセント成長し、二〇一三年の数字はさらによくなった。どんな災害にも、少なくともGDPにとっては良い面があるという経済の鉄則を、日本は体現したのだ。

 

私にとってはどれも不都合な真実でした。

社会はこんな真実で構成されているのですね。

それでも、この事実は下を向くためのものではないと思うのです。

人が正しく認識できない世界だからこそ大いに可能性を秘めていると思うのです。

 

ひたすらに隠れた真実に目を向けよ。そして、隠れた希望を見据えよ。

 

ブレグマンはそれを伝えたかったのだと思います。

 

 

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働

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