週3回の夜90分が人生を分ける

週3回の夜90分が人生を分ける。

今日はこの提案について論考してみたい。

 

これは、英国の小説家、劇作家であったイーノック・アーノルド・ベネット (Enoch Arnold Bennett、1867年5月27日 – 1931年5月27日) が著書『自分の時間』において提案したものだ。

 

自分の時間 (単行本)

自分の時間 (単行本)

 

 

以下、ベネットの主張の一説である。

私が言いたいのは、「夕方6時に、あなたははまだ疲れているわけではないのだ」という事実を直視し、受け入れるということだ(事実、あなたは疲れてはいないのだから)。

だから夜の時間が、食事のために真ん中で中断されないよう配慮することだ。そうすれば、少なくとも3時間というゆとりある時間をもてることになる。

私は何も、毎晩この3時間を、「知的エネルギーを使い果たすようなことに使え」などと言うつもりはない。

私が申し上げたいのは、まず手始めに、ひと晩おきに1時間半、何か精神の向上になるような意義のあることを、継続してやってみてはどうだろうかということである。

それでもまだ3晩残るのであるから、友人と会うこともできるし、ブリッジやテニスをすることもできる。家庭内のことをやったり、ちらっと本のページを繰ったり、タバコをふかしたりもできる。庭いじりもできるし、ただ何となく時を過ごしたり、クイズの懸賞に応募することもできよう。

なおその上に、「週末」という素晴らしく豊かな時間があるのだ。もし辛抱強くひと晩を意義あることに使いつづければ、本当に充実した生活をするために、やがてさらに4晩、5晩と努力を重ねていきたいと思うようになるだろう。

 

90分の時間を週に3日確保し、ひとつのことに集中する。その積み重ねが人生を分ける。この提案自体は的を射ているかもしれない。たしかに時間の不足を理由に関心があることに取り組まないことは誰にでもある話だ。いくら「不足」していても週に3日は90分を確保することは一般的には可能であり、その積み重ねは人生の可能性や充実に大きく作用するように思える。

10年前から週に3日の90分を語学学習に充てたらどうだろう。2340時間英語を学んだ私と、一切英語に触れなかった私とでは全く異なる人生になるに違いない。

 

が、そんなことは誰もがわかっている。

問題は、それをいかにすれば実現できるか、ということである。 

いかにすれば週に3日、90分という時間を自分の精神的な(あるいは取り組んでみたい)活動のために確保できるのか、だ。

 

結論から言うと、脳の切り離しと訓練が一つの解になる。ベネットも別の文脈で述べているが、脳を自分とは切り離して認識し、その動きをコントロールするというスキルが、大事なことに集中し持続的にそれを行っていく為には肝となる。

 

わたしはこれをみうらじゅん氏の著書から学んで実践している。彼の主張では仏教的な観点からの「脳の切り離し」がよく提案される。

脳にはクセがあり、そのクセに沿って動いているというイメージを持つと、何となく脳は同居人のように思えてくる。同居人のイメージを持つと今度はコントロール可能な存在として認識できるのだ。

試してみるとおもしろく、意外と脳のクセは矯正できる。例えば、仕事が立て込んでいると様々な案件が心配になって注意が散漫になる。しかし、毎日ひとつのことに集中する訓練を始めてからは、どんなに忙しくても目の前のやるべきことを淡々とこなせるようになった。

 

訓練の方法はシンプルだ。朝夕の食事で、とにかく「味わう」ことに集中することだ。食事の時はテレビは決してつけない。どんなに粗末な食事、例えばカップラーメンであっても、食べることに集中する。麺の固さ、スープの香り、塩加減、かやくの味。様々な要素に注目して食べることだけを楽しむ。

これができるようになるまでは大変だった。脳に築かれた強固なクセは、テレビをつけたがり、スマホをいじりたがる。何かをしながら食べたいのだ。

脳をコントロールする為には、とにかく食事に関することだけを考え、何か他のことに関心が行きそうになる脳を引っ張り戻す意識が必要だ。辛抱強く一週間も戦うと、かなりの時間を食事に集中させることができるようになる。

 

先ほども述べた通り、食事に集中できるようになると、目の前のことだけに集中する能力が身についてくる。これはとても不思議な感覚なので是非体験してみていただきたい。様々なタスクを背負っていても「この30分はこれに集中する」という意思を持つだけで、その他の心配事や関心は一切浮かんでこない。

 

はじめは30分でも徐々に集中できる時間は長くなる。これによってベネットの唱える世界観に近づくことができるのだ。

 

わたしは訓練を始めてまだ3ヶ月程度だが、今までとは一日の充足感が全く異なる。単純に自分の関心事に集中できる機会が増えたことで気持ちが充足している。どんなに仕事が上手くいかない時もだ。ベネットの提言する通り、仕事が終わっても疲れてなんていないということを実感し、驚いている。

そして、この状態を長年続けられた時の、大きな変化に今から期待している。

 

ポイントは、まず目の前の食事をできるだけ美味しく味わうことだ。